研究内容Research

ブロック共重合体の精密合成と新規秩序構造構築

高分子物質の最も重要な分子パラメータは分子量です。同じモノマー単位からなる高分子でも分子量、即ち重合度がかわると構造や物性に大きな影響を与えます。本研究室ではリビング重合法により分子量や組成の揃ったブロック共重合体を設計、合成し、熱力学的平衡/非平衡条件下において形成するナノメーターオーダーの周期的規則構造(ミクロ相分離構造、ナノ相分離構造などと呼ばれる)を電子顕微鏡、X線小角散乱を相補的に用いて詳細に観察しています。

ブロック共重合体の精密合成と新秩序構造構築
当研究室で合成されたブロック共重合体の
膜の電子顕微鏡写真

各種環状高分子の設計・調製と粘弾性特性

高分子とはモノマー単位を多数連結させた巨大分子のことです。モノマー単位を単純に連結させて得られる高分子は線状であり、2つの末端(両末端)を有します。この両末端同士をさらに連結させたものは環状の高分子となり、末端が存在しないために線状の高分子とは異なる興味深い特性を示すことが分かってきています。本研究室ではブレイカブルシール法を用いて各種環状高分子を精密に合成、分離し、その特性を明確にするために中性子散乱実験や動的粘弾性測定などを行っています。

各種環状高分子の設計・調製と粘弾性特性
ブレイカブルシール法を用いて作製した
化学反応用ガラス装置

新規プロトン伝導性高分子電解質膜の開発

究極のエコカーと呼ばれる燃料電池自動車や、家庭用コジェネレーションシステム「エネファーム」などには固体高分子形燃料電池が利用されており、プロトン伝導性高分子電解質膜が重要な役割を担っています。従来よりよく知られている高分子電解質膜としては、パーフルオロスルホン酸樹脂からなるNafionTMなどが挙げられますが、本研究室ではNafionとは異なる化学構造を有し、かつNafionの性能を凌駕する次世代高分子電解質膜の開発に取り組んでいます。

新規プロトン伝導性高分子電解質膜の開発
高分子電解質膜を含有した燃料電池の模式図

非共有結合性ゴム・エラストマー及び関連材料の設計・開発

プラスチックやゴム・エラストマーなどの高分子材料は、金属やセラミックスと並んで三大工業材料の一つとされています。一般に、高分子材料は金属やセラミックスよりも低比重で軽いため、部品として用いられる金属やセラミックスを高分子材料に置き換えることで、最終製品の軽量化(輸送時のエネルギーも削減できるため脱炭素化にも寄与)をはかることができます。本研究室では一般には低強度されるゴム・エラストマー及び関連材料に対して弱い結合とされる非共有結合を組み込むことで、軽量でありながらも強度・耐衝撃性等に優れる新規材料の開発を進めています。

非共有結合性ゴム・エラストマー及び関連材料の設計及び開発
エラストマー試料のダンベル片及び
エラストマー試料の伸長前後の様子